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里山エッセイ



新しい人へ

ぞめきコラム65 宮沢賢治 .jpg

四月は出発の季節だ。


私のアトリエにも、二人の新しいスタッフが加わることになった。
社会への夢や希望と一抹の不安を抱えての出発であろう。
 

私は、入所する若者にいつもこんな話をする。
ベテランには経験という財産がある。そして、君たち若者には可能性という宝物がある。
どちらもが、その財産と宝物を尊重しあい、共に磨いていくことが大切です。
いい建築をつくるという目標に向かって、いっしょに歩いていきましょう、と。


ところで、建築の設計というと、宮沢賢治の童話に「革トランク」という小品がある。


主人公は斎藤平太、体操がへただった宮沢賢治の分身だ。


工学校で建築を学んだ平太は、卒業と同時に建築設計事務所を開く。
お父さんが村長だったこともあって、村の消防小屋と分教場の二つの仕事が舞い込んだ。


(こんなことは実にまれです。)
 

さっそく設計図を仕上げ、工事にかかったが、大工さんたちが変な顔をする。
どうもおかしいな。
 

二つの建物が完成した。ところがである。
分教場の玄関を入って教員室へ入ろうとしたが、どうにも行けない。
廊下がなかったのだ。がっかりした平太は消防小屋へ行った。
二階へ上がろうとしたが、どうしても昇れない。
階段がなかったのだ。


(こんなことは実にまれです。)

東京に逃げ出した平太は、建築会社に入って修業をする。
母の病気の知らせに、平太は書きためた絵図面を革トランクにぎっしり詰めて故郷へ帰っていく…。
 

このあたり、東京へ出奔した賢治の姿と重なっている。
賢治が実際にもち帰った革トランクの中には、東京で書きためた童話の原稿がいっぱい詰まっていたのであるが。
 

そしてこれらの童話は、その後ずっと、今にいたるまで私たちを励まし、奮い立たせてくれることになる。
 

四月から社会に出発する新しい人たち、失敗を恐れず、どんどん進んでいって欲しい。
 

いつの日か、自分自身のトランクに夢をいっぱい詰めこむ時がくることを。

建築家  野口政司     徳島新聞夕刊 4月3日付けより


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