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里山エッセイ



森の精の住む病院

大安のその日、冬の空は真っ青で、
少し遠いがなだらかな山の稜線に囲まれた地に
掛矢の音が響いていた。

太い棟木や登り梁が次々とクレ-ンで下ろされる。
手慣れた大工さんたちがえいっ、やっと受け取り、
切り組みをぴったりと合わせて掛矢を打つ。
力に満ちたかけやの音にこだまが応えて、
木の命が蘇るよう。

最後の棟板が上って、
いつもながら、木造建築の上棟式には感動してしまう。
建て主の思いを込めた棟札は、どこに収めるのかな。


もともと神道の祭祀であるこの行事、
木の霊を鎮め、家が無事に建ち上がるようにと願って行なわれる。
曳き綱の儀、槌打ちの儀、散餅銭の儀と古式ゆかしく・・・とはいかないが、
古式の神が乗り移ったようにおごそかに、
いやてきぱきと取り仕切る頭領以下大工さんたちの動きには
ほれぼれとしてしまう。


土台に梁に柱にとふんだんに使われている木、
これらの木はどこから来た?
山で伐採に立ち会ったあの日、
80年生の杉の大木が空を切って運ばれていく光景に、
「キリンさんだ、空飛ぶキリンさんだ!」とこどもたちが歓声をあげた。
そう、川上の森から川下の町へとキリンはやってきて、
こんどは家として再びの命の日々が始まる。


ここは透析専門の病院と聞く。
透析に命を託す友人が何人かいて、
その大変さをかねがね聞いている。
週3~4日、一回の透析にかかる時間は約4時間というから、
その間木の香りと精気に包まれ、
心身共に安らぎつつの治療が受けられるならば
どんなにかほっとするだろう。

中央に並ぶ4本の柱は、森をイメ-ジして設計された由、
枝を広げるように太い梁を支えている。
この木を見上げて、患者さんたちは
さやさやと葉ずれの音を聞き、
暖かい木漏れ陽を受け、
森に流れた悠久の時を感じるだろう。

細い透析の管よ、
森の精を運べ、緑の管に置き換われ!


日本の山は今、とてつもない苦しい経営を迫られている。
その現実を知っているから、
木を使い、木の家を建てることが、
山の人たちにとってこの上ない透析なのだと、
掛矢の音に祈りを込めた。


里山の風景をつくる会 理事 
地球温暖化を考える-市民アクション2010-徳島代表  八木正江
2011年2月9日(水) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より


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